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宮ぷー・かっこちゃんドキュメンタリー映画を制作中の岩崎靖子監督です。関連動画はこちら

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岩崎靖子監督

岩崎 靖子(いわさき やすこ)

NPO法人ハートオブミラクル代表

コーチ、コミュニケーション講師、映像作家。

(株)ツーカーホン関西で5年間会社員として働き、企画部でマーケティング・販売促進を手がけるかたわら、自分の人生をかけられる何かを探し続けていた。

コーチングに出会い、自分とのコミュニケーションを重ね、人前が大の苦手な自分ではあるが「自己表現をしてみたい」という自分の想いに気づき、劇団で女優として活動。VシネマやCMへも出演。活動を続ける中で、自身が作品のすべてをつくりたい、と映像制作の道へ。人を力づける映画を製作するE・Eプロジェクトを立ち上げ、仲間とともにドキュメンタリーを制作。入江富美子監督と出会い、制作を手伝った「1/4の奇跡~本当のことだから~」は、自主上映という形で現在6万人を動員、全世界に上映の輪が広がっている。2008年には、自身が監督する「宇宙の約束~いのちが紡ぐ愛の詩」を完成。

本作品は2010年には、ロスで開かれるジャパンフィルムフェスティバルでも上映される。現在は、山元加津子さんと病に倒れた宮田俊也さんの日々を撮影中。

制作した映画を配給する団体「ハートオブミラクル」を立ち上げ。2010年にはNPO法人化し、会員を募って単なる映画配給だけでなく、映画によってご縁ができた人たちが、交流しあい、より幸せに生きていくために支えあえる環境作りに奔走中。

夢は、この地球上に生きるすべての存在が、幸せに生きる未来を創ること。

会社員から女優、映像作家になった体験をして、"人"のもつ可能の無限さを知り、より多くの人に自分の個性や能力を発揮してもらえたらと各種コーチング講座・講演、 個人コーチング活動も行っている。

監督ブログ「生きるの探究」はこちら

 こんにちは、E・Eプロジェクト岩崎靖子です。

 山元加津子さん(かっこちゃん)のドキュメンタリー映画「1/4の奇跡」「宇宙の約束」の制作に関わりました。

 2009年6月からは山元加津子さんのお友達で脳幹出血で倒れた宮田俊也さん(宮ぷー)が生きることを取り戻す日々を撮影しています。撮影の初日は、2009年6月でした。宮ぷーが倒れてから4ヶ月たった頃。ベッドに横たわる宮ぷーは、目が閉じていて体のどこも動きませんでした。「これから体のどこも動かないし、ずっと植物状態だろう」というのが大方の見方でした。

 「宮ぷーこんにちは」と呼びかけるけれど、何の反応もありません。でもかっこちゃんは話しかけます。「宮ぷー、靖子ちゃんが来てくれたよ、今日から映画の撮影スタートだよ。宮ぷーは全部治るからね、その様子を撮ってもらおうね」

 かっこちゃんは「宮ぷーは意識が戻っている」、と言いました。それを伝える手段がないだけ。話しかけると目の輝きが違うんだよとも言いました。私は一生懸命宮ぷーを覗き込みましたが、わかりませんでした。かっこちゃんはあきらめませんでした。まばたきで返事をしていると気づくのです。でも、それだけでは十分ではありません。こちらから質問することはできますが、宮ぷーから想いを伝えることはできません。

 さらに試行錯誤が続きます。文字盤を試しました。脳波でスイッチを入れる装置を試しました。そうするうちに首が動くようになって、その動きでスイッチを入れて文字を入力するレッツチャットという装置で、宮ぷーは自分の気持ちを伝えられるようになったのです。撮影に行くと「こんにちは」と綴ってくれました。インタビューにも答えてくれるようになりました。自分が投げかけた言葉に、言葉を返してもらえることがこんなにもうれしいことなんだとしみじみと実感しました。

 12月に入り、クリスマスのシーズンになりました。クリスマスイブの前日ということで、病室でプレゼント交換が始まりました。 宮ぷーがかっこちゃんにプレゼントがあるというのです。 かっこちゃんが開けるとその中から、かわいいピンクのかばんが 出てきました。その日着ていたピンクのワンピースにびっくりするくらいよく似合っています。

 パソコンの通信販売のサイトで、妹の恭子さんに手伝ってもらいながら、ものすごい数のかばんの中から、見つけ出したのですって。 これじゃない、これでもない、と宮ぷーは探し続け、ついに見つかりました。選ぶのに1週間もかかったそうです。

 その時、私は春のことを思い出していました。前作の映画「宇宙の約束」のためにかっこちゃんを撮影しにきたときのこと。ある和菓子屋さんに入った時、かっこちゃんが子どもの日のお菓子を買いました。「宮ぷーからりょうちゃんへのプレゼントにするの」

 撮影が終わった後に、一緒に宮ぷーの病院へ行きました。宮ぷーは眠っているように見えました。

 かっこちゃんは、昼間に買ったお菓子を取り出して、袋に「りょうちゃんへ 宮ぷーおじさんより」と書きました。

 あの頃は、「宮ぷーおじさんより」と書いてはあったけれど、 かっこちゃんが選んだものでした。でも今日は、宮ぷーが選んだもの。宮ぷーが心を込めて選んで決めたもの。 宮ぷーを感じられることの喜びが体中に広がりました。

 宮ぷーの意識や意志を感じられること、宮ぷーの気持ちを知ることができること、お互いの気持ちを伝え合うことができること、一緒に笑ったり泣いたりできること。そのことがどんなにもどんなにも素敵なことか。宮ぷーは戻ってきてくれた、よみがえってきてくれた、そしてもう一度、時間をともにしてくれている。 それは本当に本当にうれしいことです。

 世界中には、意識がありながらそのことを伝えられずにいて、周りの人からは植物状態だと思われている人がいます。意識があるのにそれを伝えられない、その気持ちはどんなだろう。焦り、恐怖、悲しみ、悔しさ、歯がゆさ、言葉では表現できないほどに苦しみだと思うのです。そして、本人だけではない、周りの人たちもまた苦しみます。一言でもいい、愛する人の声が聞きたい、想いを知りたいと。でも、どんなに呼びかけても、語りかけても、返事が返ってこない。想いが強いほど、落胆も大きくなって。 そして、そんな状況でもほんの少しの工夫や装置を使うことで、気持ちを伝え合えるかもしれないのです。お互いの気持ちを伝え合って、存在を感じあって、ともに生きることができるかもしれないのです。私が体験したような喜びを、たくさんの人に体験してほしいと思います。これから創る映画も、そのきっかけとなったら嬉しいし、このホームページもたくさんの人の光になっていくことを確信しています。どうぞ、気持ちを伝え合える喜びを、一緒に生きられる喜びを、世界中のあちこちに増やす仲間になって下さい。

 ここまで読んでくださってありがとうございます。またどこかでお会いして、気持ちを伝え合える日を楽しみにしています。

岩崎靖子

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